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それからしばらく経った明治2年、1869年5月15日。箱館奉行の兵と共に新撰組隊士たちの篭城した弁天台場、降伏。
同月、18日。五稜郭篭城組が降伏し、一年半近くにも及ぶ、戊辰戦争は終決を迎えた──……。
☆☆☆
──戊辰戦争終結から数日後。オレは新撰組副長土方歳三が戦死ししていたことを知る。話によれば、5月11日に額兵隊二小隊を率いて出陣した土方は、馬上で腹部に被弾し、それが原因で命を落としたとのこと。
どうやら斬り合いでは負けなくても、流石に銃弾には勝てなかったようだ。
「結局、決着は着けられなかったな……」
オレは誰もいない丘の上で一人佇み、決着を着けられぬまま、先に逝った親友を思いながら空を見上げる。
「……否。己の『士道』を貫き、剣に生きて、剣に死んだ土方の勝ち、か……」
静かな風が吹き抜け、耳の上辺りまでしかない、オレの短い髪を揺らした。風と草木の歌が耳に届く。
『いや……今生きているお前の勝ちだよ──……』
「土方……?」
風が鳴らす草木の歌に混じって、あいつの声が聞こえた気がした。
「そんなはずないか。
あいつは死んだ。あいつの望んだ通り、戦場で剣士として。
……土方。お前は剣客としても、一人の人間としても素晴らしい人間だったよ。日本男児の鑑だ。
願わくば──……」
願わくば
真の“剣客”たる
我が好敵手(トモ)の
意志よ、生きよ
遙かな未来まで──……
-end-
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