罪の数だけ愛を捧ぐ

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 男は驚きに目を丸くした。確かに弁慶の髪の色は鬼のそれに近いのかもしれないが、それでも瞳の色は鬼のものではない。彼の瞳の色は山吹色である。だが、それよりも男の目を惹いたのは弁慶の容貌だった。長い睫毛で縁取られている瞳は大きく黒目がちで、少女のような顔立ち。だが弁慶の着ている単衣の下に見えるその平たい胸や、適度についた筋肉は彼が男であることを示していた。  男は腕を伸ばし、腰ほどもある弁慶の蜜色の髪を一房すくう。すると弁慶は弾かれたように言葉を紡ぐ。 「ほら、この色は金ではなく茶でしょう。ね?」 弁慶はそう言いながら、男の警戒心を煽らないよう微かに微笑む。 「あんた、男だったんだな……」 先程まで無言だった男の一言目がこれである。弁慶は可笑しくて笑った。 「ふふっ、もう逃げませんね?僕の事を人に話したりして、悠々自適の生活を壊すようなことをされては敵いません」 そう言いながら弁慶は男の上から退いた。 「……ここに住んでいるのか?一人で?」 男は半信半疑だった。目の前の華奢な男が一人、森の奥で暮らしているなど考え難い。
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