第一章

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新「はあっ…も…なんで階段ねーんだよっ…!」 どれだけこの果てのない廊下を走ったかわからない。 左側には教室が規則正しく並んでいて、右側にあるはずの階段はない。 窓から見える景色はいつもと変わらないはずなのに、人どころか車さえも通らない始末。 新「っ…あ!?」 やっと廊下の先が見えてきた! 出て来そうな涙を必死で堪え、急いでそこまで走る、けど。 新「い…行き止まりかよ…!」 脱力感が半端なく襲って来る。 俺はぺたりと廊下へ座り込んだ、ら。 新「…扉!!」 そこには小さな小さな扉があって、恐る恐る開ければ階段が見えた。 新「で…でもどうやって…」 さすがにこんな小さな扉、通れる訳がない。 微かに灯った期待はすぐになくなり、制服に付いた埃を払って立ち上がった。 新「…ん?なんだこの教室…」 ふとドアのガラスから中を覗き込めば、そこだけ何故かピンクのペーパーフラワーと色とりどりの折り紙で作られた鎖が飾ってあった。 机は二つずつ重ねられて後ろに下げられていて、前方には空間。 俺は無性に気になってしまい、ドアを開けて中へと入った。 黒板の真ん中には赤い濡れた字で 「おかえり  僕らのアリス」 新「っ!!」 驚愕して教室内を見回す。 新「!!人…いた…!」 グレーのジャケットに蝶ネクタイ、黒いズボンを着たまるでサラリーマンのような… しかし、ソイツにはサラリーマンには、いや、人にはないものがあった。 白くてふわふわした、天に向かって伸びる、耳。 まるで兎のような… 「ウデ ウデ ウデ♪  ウデはどこだろ♪  ウデがなくっちゃ♪  僕に触れてもらえない♪」 新「ひ…っ!?」 ソイツはまるで俺なんか気付いていないかのように、気味悪く歌い出した。 手には赤ちゃんのような人形を抱えている、のだが。 おかしい。 その人形には腕、足、頭が、ない。 そこから赤い、まるで血のような液体が滴り落ちて、教室に水溜まりを作っていた。 「足りないなあ♪」 新「っ!?」 「だめだめ、足りない……急がなきゃ…アリス…」 ソイツは机を通り抜け、ドアを通り抜け、消えた。
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