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新「はあっ…も…なんで階段ねーんだよっ…!」
どれだけこの果てのない廊下を走ったかわからない。
左側には教室が規則正しく並んでいて、右側にあるはずの階段はない。
窓から見える景色はいつもと変わらないはずなのに、人どころか車さえも通らない始末。
新「っ…あ!?」
やっと廊下の先が見えてきた!
出て来そうな涙を必死で堪え、急いでそこまで走る、けど。
新「い…行き止まりかよ…!」
脱力感が半端なく襲って来る。
俺はぺたりと廊下へ座り込んだ、ら。
新「…扉!!」
そこには小さな小さな扉があって、恐る恐る開ければ階段が見えた。
新「で…でもどうやって…」
さすがにこんな小さな扉、通れる訳がない。
微かに灯った期待はすぐになくなり、制服に付いた埃を払って立ち上がった。
新「…ん?なんだこの教室…」
ふとドアのガラスから中を覗き込めば、そこだけ何故かピンクのペーパーフラワーと色とりどりの折り紙で作られた鎖が飾ってあった。
机は二つずつ重ねられて後ろに下げられていて、前方には空間。
俺は無性に気になってしまい、ドアを開けて中へと入った。
黒板の真ん中には赤い濡れた字で
「おかえり
僕らのアリス」
新「っ!!」
驚愕して教室内を見回す。
新「!!人…いた…!」
グレーのジャケットに蝶ネクタイ、黒いズボンを着たまるでサラリーマンのような…
しかし、ソイツにはサラリーマンには、いや、人にはないものがあった。
白くてふわふわした、天に向かって伸びる、耳。
まるで兎のような…
「ウデ ウデ ウデ♪
ウデはどこだろ♪
ウデがなくっちゃ♪
僕に触れてもらえない♪」
新「ひ…っ!?」
ソイツはまるで俺なんか気付いていないかのように、気味悪く歌い出した。
手には赤ちゃんのような人形を抱えている、のだが。
おかしい。
その人形には腕、足、頭が、ない。
そこから赤い、まるで血のような液体が滴り落ちて、教室に水溜まりを作っていた。
「足りないなあ♪」
新「っ!?」
「だめだめ、足りない……急がなきゃ…アリス…」
ソイツは机を通り抜け、ドアを通り抜け、消えた。
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