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鬱蒼と茂る森。空高くまで伸びる木々は日光を遮り、日中であろうとそこはどこか薄暗い。その森の名はアプサラス。人間領、魔族領の中間に位置するそこは、かねてよりある噂があった。
『アプサラスの森には、化け物がいる。』
その噂の真偽はわからない。けれど、強力な磁場ともはや樹海と言っても過言ではないほどの木々の密集。さらに多くの獣が住まうということから、この地には人間はもとより、魔族ですら忌避し、入り込むことはなかった。
だが……
そんな魔の森の一角に、単身歩を進める若者がいた。
歳のほどは二十代前半。全身を黒で固めた衣服を纏い、左手には唯一白を基調とした一降りの刀を握っている。衣服の間から見える肉体は、一目でわかるほど筋肉に覆われており、日で焼けた肌には無数の傷がまるで彫刻のように残されていた。
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