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迷路のように……否、もはや右も左もわからないほどに密集する木々の間を、しかし、青年は危なげない足取りで進んでいく。響くのはその足音のみ。森の中は静寂が支配し、鳥の鳴き声はおろか風の音も聞こえない。
そうして半時間ほど進んだ時、不意に世界が変わった。森を支配していたはずの静寂は消え、鳥が囀り、風が歌う。それを聞いて一安心したように、青年、ルシファ=ヴァリアントは小さくため息をついた。そうして思い出したように苦笑する。
「相変わらずだね、ここは……」
森の一部を境に覆われる結界。他者を拒むそれは作為的に作られたのではなく、偶然出来た自然の産物。だからこそ、それはまさに自然の意思によって作られたと言っていい。それを抜けて出た先は、相変わらず木々は立ち並ぶものの、木漏れ日の溢れる青年の心の故郷だった。
ひとしきり懐かしい故郷の景色を眺めた後、青年は再び歩き出す。向かうは約束の地。幼少を過ごした彼の家へ……
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