7人が本棚に入れています
本棚に追加
◇ ◇
探していたものは簡単に見つかった。深い森の中に建つ、粗末な一軒の木造家屋。しかし、ルシファの記憶に残るそれとは違い、目の前にあるのは自然に侵食され、所々が朽ちていくばかりの廃屋同然になっている。
けれど、それでも十分。この家があるということは、未だ彼女はここに残っているということなのだから……
一歩、その家に向けて踏み出す。
その瞬間―――
「あ……」
―――キィと軋んだ音を立てながら、その扉が開いた。そこに立っていたのは女性。髪と瞳は世にも珍しい深い紫。だが、それ以上に目を引くのはその肢体だった。豊満なバストにくびれたウエスト、そして突き出たヒップは同じ女性なら感嘆せざるを得ないほどの美しさを、男性なら皆が皆、引き込まれてしまうような妖艶さを醸し出している。
「おや?何とも懐かしい顔だな……」
ルシファに気づいた彼女は、まずそう口を開いた。その口調はまさしく男のそれで、その右手には絶命した人間の姿がある。だが、それはもはや人間ではなく、精巧に作られた一種の人形に近い。というのも、その肌は血の通った色ではなく、全てを絞りつくされ生物としては到底ありえないような青白さを露呈しているためだ。
最初のコメントを投稿しよう!