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(Side:透)
訳が分からない。
あの日を境に俺は高崎を見ないようにしてたし、関わりはもちろん、近寄りもしなかったのに。
何で今日に限って高崎は帰らなかったの。
何で今日に限って高崎は話しかけてきたの。
何で今日に限って高崎は俺を自宅に呼ぶの。
分からなかった。
高崎が強引なんていうのも知らなかったし、ヤリたがりなのは知ってたけど誘うなんて知らなかったし。
なにより何で、俺なの?
何で、手、繋ぐの?
高崎に連れられるまま、高級そうなマンションのエレベーターに乗せられて、そこで軽いキスをされた。
ちゅっていう音が響いて、俺は自分の顔に熱が集中するのが分かりながらも、ただただ呆然と高崎を見上げた。
「……あー…もう本当に、…透君ヤバい」
「…た、たか…」
「あ、着いた。ほら行くよ」
触れた唇が熱い。
繋がれた手が熱い。
でも、何で?
高崎は何で俺なんかをいきなり自宅に呼んだの?何でキスしたの?
俺は訳が分からないまま泣きたくなった。
高崎が分からなくて、同時にあの日に諦めた高崎への想いが溢れて。
あの日に、俺の恋は終わったのに。
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