兄弟。

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一つ年下の、大事な弟。 僕とは違う、明るくて活発で、カッコいい大地(だいち)。 彼を男として見始めたのは、いつからだっただろう。 彼を羨む気持ちが愛しさに変わったのは、いつからだっただろう。 とうの昔のような気もするし、昨日のような気もする。 それでも、この気持ちに気付いてからはただ彼を見守る。伝える気もないし、知って欲しいとも思わない。 ただ彼が幸せそうに笑っているのを見たい、それだけでの気持ちで一緒に生活を始めた。 「大地」 「……あ?」 「僕、今日はバイトだから…。夕飯、先に食べてなね」 「…ん、……今日、朝から…講義なん?」 「うん」 「……うーい」 こしこしと眠そうな目を擦って、大地は布団にまたくるまった。大きな体をしているくせに、その仕草が小さい子供のようで小さく笑う。 大学2年の僕と、同じ大学に進んで、でも学部が違う大地と2人暮らしを始めて半年。 この生活にも慣れてきた。 カチャリと鍵を閉めて、外へ出る。 よく晴れた、けれど少し冷たい風が吹いてる日だった。
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