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(Side:弟)
兄が出来て嬉しかった。
一人っ子なのは、正直つまんなかったから。だけど、その嬉しさが続いたのは高校に上がるまでだった。
静かで、思慮深くて、平凡な雅人(まさと)。
顔立ちも取り立てていいわけでもないし、細いわけでもないのに。
高校に上がってから、毎晩夢で雅人を犯していた。サラサラな黒髪に指を絡めて、逃げる腰を押さえつけて、欲望の限り彼を追い立てる、夢。
驚いて、同時に悩んで、女をとっかえひっかえした。
だけど夢は変わらなくて、眠るのが怖くなった。あの雅人に、自分が欲情しているなんて、認めたくなかった。
だけど、雅人が大学を進学するにあたって家を出た時、言い様の無い寂しさが俺を待っていた。
だから、追い掛けた。
家に、隣に、自分の近くに雅人がいないなんて耐えられなかったから。
大学も同じにして、2人暮らしにこじついて半年。あの夢よりも更にひどい悪夢に、俺はうなされた。
雅人が俺に好きだと言ってくる、夢。
有り得ない、夢。
だけどその夢見たさに、俺はいつもギリギリまで眠るようになった。
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