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プロローグ
荒漠とした平原だった。
地に水はなく、草は枯れ、大気は荒れていた。
眼下には3000の敵兵。
磨き抜かれた装備は砂塵の中でも目に眩しかった。
一人ひとりの顔も、なるほど天族と言うに相応しい。
一分の隙も無いその荘厳な隊列には、神聖な雰囲気さえ漂っていた。
まるで、これから悪魔でも討伐するかのように此方を見据えている。
相対するは、騎馬のみの200の兵。
圧倒的寡兵だが、幾多の歴戦を勝ち抜いてきたつわもの達の目に、怯えの色は欠片も無い。
兵はじっと馬上のアキラの挙動を見つめている。
アキラは、隊列の前で声を上げた。
「お前らは、ここで死ぬ。
しかし犬死は許さない。
一人、15の天族を殺せ。
お前らはそれで祖国を救えることになる。胸を張って英霊の座に座れ。」
轟、と200が呼応する。
一人ひとりの気合で、大気が震える、依っている丘の風が逆巻く。
アキラは100ずつ、縦列に並ばせ、その先頭に立った。
自分の身長ほどの直剣を難なく肩に掛ける。刀身の光は鈍い。
両軍の気合が高まる。もうしばらくすればどちらとも無く進軍しだすだろう。
200の気合が最高になったと感じた瞬間、雄叫びを上げてアキラは馬を駆けさせた。一瞬の遅れもなく全軍が続く。
騎兵200の、逆落とし。
風さえも切り裂く様に、縦列を小さく保ったまま疾駆した。
目の前の3000は、絶望的な厚い壁の様だ。
アキラに恐怖はなかった。
3000も進軍してくる。もう数秒でぶつかるだろう。
振り上げた手には、大剣の淡い脈動を感じている。
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