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……。
「おーい!すどぉ!須藤アキラー!いないのかぁー!?」
聞きなれた、低く掠れた声が山の麓にある広場に響く。
その声で俺の意識は、白昼夢から呼び戻された。
「あ、はいはいっ!」
ふと周りを見ると、ニヤニヤと隣の班の男がこっちを見ていた。
いっつも俺が一緒に遊んでいるグループの男子だ。
俺はそいつ等に中指を立てて担任の方を見た。担任と目が合う。
「いんじゃねえか。お前、あんまぼさーっとすんなよ。
山道から転落したら、怪我じゃすまねえんだからな。
それにな。昔っからこの山、神隠しがあるって評判なんだぜ。」
ガハハ、と太く笑う。
クラスのみんなは、それを聞いて「そんな山選んでんじゃねー!」など、笑いながら野次を飛ばしていた。
「はーい、すいません。」
修学旅行二日目。オリエンテーション。
広場の前には山があり、紅葉の兆しが見え出している。
せっかくの修学旅行だけど、俺の気分は、最高に楽しい!!って感じでもなかった。
俺が楽しめないその原因はただ一つ。
同じ班にいる二人の男子のことだ。
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