プロローグ

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クラスの人気者。 どんな内気な女子とも話すこの俺、須藤アキラには苦手とする男子が二人いる。 「はい、じゃあ次、堂島、堂島ガイ!」 「あーい」 俺の真後ろから同じ班の堂島ガイの声がする。 一時期、テレビでよく流れた声だ。 生で聞く声は新鮮な気がした。 単純に俺とこいつはあまり話したことがないから。 休み時間になるとガイはクラスから姿を消す。 噂によれば、ガイはいっつも屋上でのんびり昼寝をしているらしい。 でも、俺がガイと話したことがないのは、休み時間に顔を合わせないから。ってだけじゃない。 ガイは気分屋だったから、気に入らない奴や、気分が乗らない時は話しかけられても答えないのだ。 俺が3年の初めのほうに話しかけた時は、30分ほど会話が続き、夏休み前に話しかけたときは、ガイは一言も答えなかった。 それからガイとは話していない。 だから、俺が気に入らない奴に認定されたのか、その時たまたまガイの気分が乗らなかっただけなのかは分からないままだ。 ガイに対するクラスの評価は、一言で表すと「謎」だった。 クラスで浮いてるのは間違いない。 でも、ガイは常に、みんなに一目を置かれていた。 それはガイが、超絶的な運動神経を持っていることだったり、荒くれものの多い野球部の主将だったり(ガイが入部したその年に甲子園で優勝した) 最強の高校生ピッチャーという通り名で、テレビに引っ張りだこの人気者だったり、 それでいてムカつくマスコミを生放送中にぶん殴って野球部を退部させられたり、そんなことをしているからだった。 ガイの立場が、みんなの憧れ、になったり、学校の恥、になったりと、コロコロと常に変化する上に、当人はほとんど口を開かないもんだから、 結局、振り回されることに疲れた僕等は「謎」というブラックボックスにガイを放り込んだわけだ。 「はいつぎぃー。なぎ!凪ハヤテー!」 「はい!」 今度は目の前からハキハキとした声が聞こえてくる。 男にしては低い身長が、なで肩のせいで余計小さく見える。 「よーっし、6班男子3名、女子3名。間違いないなー。 班長は…、ハヤテだな。」 「そうです」 「はいおっけー。お前らの出発は6番目だ。各自弁当を受け取って、この場所で合図があるまで待機。 ……返事はどうしたー?」 「「はーい!」」
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