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ほかの班の点呼が始まり、弁当を取ろうと立ち上がろうとすると、ハヤテが手で制した。
どうやら全員分とって来てくれるらしい。
「ほら、アキラ君。」
少したってハヤテに弁当を渡された。
「ああ、サンキュ」
そう言うと、ニッコリと笑って、後ろにいる女子のほうへ行った。
久しぶりに正面から見たハヤテは、やっぱり目を疑う程の美男子だった。
アイドルなんか目じゃない。
秀才で、美男子。おまけにいい奴。クラスのハヤテに対する評価はそんなところだ。
後ろからは、やはり女子のキャーキャー声が聞こえてくる。
様子を見ると、ガリガリに痩せて頬骨の尖った女子が、叫びすぎてフラフラになっているようだった。
その脇にいたぽっちゃり系の女子が、がっしりと支えて、どこからだしたのか、酸素ガスを吸引させながら、やっぱり叫び続けている。
これは余談だけど、ハヤテには特定の相手はいないようだ。
なんでも、女子の間で「ハヤテはみんなのもの条約」という物が、水面下で結ばれているらしい。
そのあほらしい条約は、夏休み前に学年のボス猿とでもいうような女子二人が、ハヤテを巡って大喧嘩した際、それの和解案として提案された。
そして夏休みが明ける頃には、晴れてハヤテはみんなのものになったのだった。
友人関係の広い俺が、珍しく苦手とする男子。堂島ガイと凪ハヤテ。
いまパッと説明しただけでお分かりいただけただろう。
こいつ等は俺のキャパシティーを超えている。
なぜ平凡な男子高校生の代表とでも呼べるこの俺が、こんな異端児二人と同じ班になったのか?
それはくじ引きの結果という、神様の気まぐれのようなものだった。
つまり、運命のいたずらとでも言うべき、この奇妙な物語は、俺が教室でくじを引いた瞬間から始まっていたわけだ。
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