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(…毒薬…死…。)
王子が口に出すことを恐れていた言葉を、魔女はやすやすと口にした。
言葉の重みが王子の心を打ちのめし、呼吸さえも忘れさせた。
体と魂を強引に引き剥がす行為への恐れが、彼を貫いていたのである。
一緒の静寂の後、魔女は再び口を開いた。
「ひと舐めして数秒で効果が御座います。」
「………。」
やっと、王子は凍てつくような空気を飲み込んだ。
「味も素晴らしいのですよ。舌が痺れるほどに苦く、喉が焼けつくほどに辛く、全身がとろけるほどに甘い。」
魔女はしゃがれた猫なで声でそう言うと、また豚のように貪欲な汚い声でバカ笑いを始めた。
薬は魔女の手の上で禍々しく七色に輝いている。
蜜に濡れた娼婦の唇のように、しどけなく甘やかな魔性の輝きが、艶めかしい死の香りを漂わせ、王子を誘った。
(悪趣味だ。)
王子は苦言を呈そうとしたが、ふとあることを思い出したために思い止まった。
(憎たらしい減らず口に叩き込むならそれぐらいの味が丁度いい。きっと私にも。)
王子は麗しくも自嘲的な笑みを浮かべ、やっと薬を受け取ることを心に決めた。
魔女が座っている椅子にゆっくりと歩み寄る。
彼が一歩踏み出す度に、古びた木製の床はぎしぎしと軋んだ。
魔女に一歩、また一歩と近づく度に、王子はカビ臭い闇が手足にまとわりついて重くなっていくように感じていた。
間近から見下ろす魔女の姿は一層みすぼらしく、その異形の姿はますます王子をより不快にさせた。
薬を差し出す魔女の手の指は、二本は切り落とされたかのように短く、三本は通常なら有り得ない方向にねじ曲がっている。
片手に九本もの指があるというのに、まともに機能している指は五つの関節がある四本だけだろう。
数え切れないほどの深い皺が刻まれた骨と皮だけの魔女の手が、それが生きてきた年月の重みを表しているかのようだった。
(こんなにも醜悪な者が、数百年も生きていたのか。
なんと悍ましいことだろう。)
魔女の傍らにたどり着いた王子が足を止める。
すると、これまで一度も彼に視線を流そうとしなかった魔女が、突如王子の顔を見上げた。
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