永久に夢を観よう

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「美しい…。」 魔女が感嘆の声を上げた。 つい先ほどまで魔女の顔を隠していたフードの下から、爛々と強欲に輝く目が王子の顔を凝視している。 王子は声を上げることも忘れ、魔女の顔に目が釘付けとなった。 彼の胸は震えていた。 「暁の洗礼を受けた稲穂のように豊かな黄金色の髪。絹のように繊細かつ滑らかで、新雪のように犯しがたい白さを持つ素肌。何より、神々に祝福された海のように穏やかで、深い輝きに満ちた麗雅な藍の瞳…。」 魔女はまるで詩を暗唱しているかのように、恍惚とした声色で王子を愛でた。 その言葉を紡ぐ唇からは、黄ばんでゴミだらけの歯と肉の色をした歯茎が剥き出しになっている。 鼻は高い鷲鼻で、小鼻が顔の幅とほぼ等しいほどに大きく、鼻孔からは大量の毛が溢れていた。 白髪は薄い黄土色に染まっている。 赤黒くただれた肌をしたその顔は、おおよそ人間の顔には見えない。 瞼のない三つの目は、熱く欲深い視線を王子に送り続けている。 その目は夕焼けのような朱色だった。 燃えるようなその色は、王子に世界が終わり燃え尽きてゆく様を連想させた。 世界が終焉を迎えるその瞬間には、小さな嘘など一欠片の希望にさえならなかったのだと、彼はこのときようやく悟ったのだった。
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