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王子は煌びやかな憎悪を含んだ眼差しで、魅惑的な悪魔のように魔女へ微笑みかけた。
「だから薬を頼んだんだ。今は遠い場所に居る愛しい人を、永遠に夢の世界へ閉じ込めるために。」
魔女の調子は変わらない。
五つの関節がある指の周りに、薬をくるくると漂わせながら、
「…はぁ…。」
適当な返事を返すだけだ。
暖炉の炎が甲高い悲鳴を上げて弾けた後、辺りはシンと静まり返った。
実は、魔女が適当な相槌を続けるのは、彼の心情を理解できていないからではない。
全く逆だ。
彼が発する言葉など、魔女は声を聞く前から既にわかりきっていたからだ。
魔女はガラス玉でも覗き込むかのように、簡単に人の心を覗き込んでしまうのである。
この醜悪な魔女に、王子は全てを見透かされていたという訳だ。
些かの動揺も見せない魔女の様子に、王子もようやくそれを理解した。
そしてそれが、彼には酷く気に食わなかった。
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