永久に夢を観よう

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(貴様にいったい何がわかる!私のこの愛が貴様に理解出来ているとでも言うのか!?醜い魔女の分際で!) 王子は拳を握り締め、必死に怒りを抑えた。 相手は悪魔に魂を売り渡し、恐ろしいく強力な魔力を手に入れた魔女なのである。 冷静に話を進めなければ、どんな手酷いしっぺ返しに遭うかわからない。 王子は魔女に問いかけた。 「…その薬は、私が望む通りの効果をもたらしてくれるのか?」 魔女が王家の者に対して、嘘を吐くことはない。 これは魔女と王家との間に交わされた契約だ。 しかし、魔女は巧みな話術で、長年に渡り王家を惑わして来た。 言葉を慎重に扱わなければならない王家は、魔女の自由な言論に対抗出来ず、煮え湯を飲まされ続けてきたのである。 今魔女の手にある薬にも、王子が望んだ通りの効果がある保証はない。 王子は魔女の矮小な姿を、憎しみに燃えるサファイアのような絶対零度の瞳で睨みつけた。 すると、魔女は激しく体を震わせて、怪鳥の如く甲高く下品な笑い声を上げた。 一瞬、暖炉の炎が赤々と燃え上がり、魔女の鋭い角度に曲がった背を得体の知れない化け物のように見せる。 「ご安心を…。」 暖炉の炎はゆっくりとその勢いを収め、部屋は再び濃い闇を取り戻した。 魔女は宙に浮いていた薬をふわりと自分の手のひらに乗せる。 それを再び王子に向かって差し出し、魔女は打って変わって厳かな口調で言った。 「ご要望通りの毒薬で御座います。死に至る…ね…。」
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