青空へ飛ばした願い

5/7
前へ
/35ページ
次へ
ばあちゃん泣いてた、 背中丸めて、 ハンカチぐしゃぐしゃにして、 息を呑み込むみたいな泣き方。 声は聞こえないのに、 どっから出るの? ってくらい涙が出てて。 顔の皺を伝って流れて行ってた。 俺も泣いた、 でも父さんと母さんが いないから泣いたんじゃ無い。 だってばあちゃん言ったから、 『長い旅に出たんだよ』って 『とっても長いけど、春くん待てるよね?』って だから泣かなかった。 でもばあちゃんが泣いてるから、 悲しくなって涙が出た。 ばあちゃん泣かないでよ、 父さんも母さんも帰ってくるんでしょ? 長い旅でもいつかは帰ってくるから、 だから泣かないでよ。 ばあちゃんのついた小さな嘘。 幼い俺 幼かった俺。 騙されたってしょうがない。 帰って来ないよ、 あんたの両親死んだのよ。 そんな現実くそくらえ。 ばあちゃん、 騙してくれて、ありがとう。 ・
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

746人が本棚に入れています
本棚に追加