青空へ飛ばした願い

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信じてたけど、 父さんと母さんは帰らなかった。 やっほ、も 渋滞しちゃった、も 無かった。 俺は小学校3年生で。 俺の時間は小学校3年生で止まった。 いや、止めた。 明るく元気に、 じゃないとばあちゃんが悲しむだろ。 素直でいい子、 じゃないと父さんと母さんが帰って来れないだろ。 …でも、 自分で止めたくせに、 時間が動いたら辛いのは自分なのに。 体はどんどん成長して、 ばあちゃんの背をとっくに追い抜かして、あの日飛ばした靴が絶対に合わなくなって。 それに伴って心の時間が動き出した。 それで聞きたくない 自分の声が聞こえた。 分かってるんだろ? もうお前は小学校3年生 なんかじゃない。 もう父さんも母さんも 帰って来ない。 もう二人共死んだんだ。 中学3年。 初めて、両親を失った事に 泣いた日だった。 ・
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