回想

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「バスケしたい」 「それはできないの」 「なんでできないの?」 悲しげな母さんの顔をみて、それ以上お願いはできなかった。 中学校に入学して3ヶ月、こんなやりとりが続いている。 バスケットボール部への入部は、心臓病を言い訳にしていた弱い自分からの脱却だと考えていた。 またいじめられるのだろうな。 小学校の頃、数少ない友達とやったバスケットボール。 体を動かしても動悸を感じたことはないし、人並み以上に上手だという過信もあった。 たまにある体育の授業は楽しくて仕方ない。 「ボールまわすのは俺がやるから。」 バスケットボールを片手に抱えながら声をかけてきた。 これが田島洋二との出会いである。 小学生の時から運動神経抜群で、勉強もでき、陸上部の期待のホープといったところだ。 自分とは接点のない存在。 そう思っていた。 「池上、背が高いからゴール下にいて」 分け隔てなくチーム一人一人に声をかけている。 こういう人がムードメーカーと呼ばれるんだろうな。 自分の境遇と照らし合わせて、嫉妬心さえ感じる。
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