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洋二の頑張りも及ばず、試合は僅差での負けとなった。
負けた悔しさ以上に、力の差をみせつけられた事が悔しい。
気持ちだけ先行してしまい、空回りをしていたに違いない。
うなだれてロッカールームへ入ると、ちょうど着替えをする真也と目が合った。
あの頃を思い出して声をかける。
「うまくなったなぁ」
声をかけた僕を見て、微かに笑うのがわかった。
「俺、バスケ部だぜ。」
そう言うと真也は早々と教室に帰っていった。
手の隙間から砂がこぼれ落ちる感覚に似ている。
「かんじわりぃな、あいつ」
洋二だ。
「点差も5点じゃん」
「うん」
同年代の優しさには慣れてない。
返す言葉は最小限に抑えてしまった。
下校はいつも一人。
考え事をするにはもってこいだ。
体育の授業はマラソンと水泳以外の全てに参加させてもらえている。
身長はクラスで2番目に高い。
おかげで運動はよくできた。
それもあって今日の出来事は受け止めたくなかった。
何もできない自分ではなく、病気である自分に腹が立つ。
なんで俺だけ?
意味のない自問自答を繰り返していた。
考え事をすると帰りは早く感じ、寂しさを紛らすことができる。
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