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家に帰ると暇つぶしの方法を考える。
ゲームや漫画などを頭の中に浮かべて選ぶのが日課だった。
この作業も今日は進みが悪い。
しばらく考えた後、グローブと軟式ボールを持ち出して外に出た。
あの場所へ行こう。
一番落ち着ける。
キャッチボールの相手は灰色の壁と決まっていた。
コン
ボールは無機質な音を出し跳ね返ってくる。
アスファルトはイレギュラーなバウンドを生み、思いがけない方向にボールを転がらせる。
それでも飽きずに続けた。
やることがないからだ。
むしろ、予想外の動きであることがこの遊びを飽きさせない。
何時間続けただろう。
暗がりでボールを確認できなくなり始め、腹が減ると帰ることにしている。
体を動かすことで虚しさを晴らすことはできないが、これといって良い方法を知らないのだ。
ガチャ
玄関の靴の数から、兄貴が帰っていることに気付いた。
年は2つ上で、似ていないと言われることが多い。
小学生の時はよく遊んでいたっけな。
幼稚園から小学校の低学年までは入退院を繰り返していたため、記憶が定かではない。
ただ、よく二人で遊んでいたことは覚えている。
最近は会話もほとんどなく、お互いを敬遠していた。
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