やっくん

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遅れて合流した棟方さんは凄い勢いで弁当をたいらげている。 流し込むようにお茶を飲み干すと、思い立ったかのように立ち上がりグラウンドに向かって駆けていった。 グラウンドには盆踊りのような音楽が流れ、棟方さんを中心に皆が踊っている。 「私もいくわ」 そう言い残すと、早苗さんも満面の笑みで駆けていった。 二人ともパワフルだな。 僕は急に恥ずかしくなり、疲れを言い訳にそこに居座ることにした。 「ふ~」 ため息をついて座り直す。 ふと振り返ると、そばにたっている少年の姿が目に入った。 釣り上がっている目は、ダウン症の影響と考えられる。 名札を確認して問いかけた。 「たけしくんは踊らないの?」 「あれは楽しくない」 「そうかな?みんな楽しそうだよ」 「いつも同じ事してるもん」 会話が成り立つ程に症状は軽いようだ。 知的障害者に偏見を持っているわけではないと思っていた。 ただ、心臓障害者の自分が知的障害者を助けることで、自分の存在価値を誇示したかったのかもしれない。 しかし、無知からくる自分の視野の狭さには悔しささえ感じる。 自分の意思を持つたけしくんは誇らしげだ。
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