やっくん

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午後の部の開始を知らせる棟方さんの声が響く。 「みんなぁ、全力で頑張ろう!」 やっくんの手をしっかり握り、時間を忘れるぐらい走り回った。 既に何種目の競技に参加したかもわからない。 いい汗をかいた。 時間はあっという間に過ぎ、最後の結果発表。 発表と共に大きな歓声が沸き上がる。 しかし、やり抜いた僕には、紅が勝とうが、白が勝とうがどうでもよかった。 「池上勇太くんとやっくん!」 大きな棟方さんの声に驚いた。 どうやらMVPをもらったらしい。 「おめでとう」 最初に声をかけてきたのはたけし君だった。 「やっくん握手しよ」 そう言って手を出すたけし君に対して、やっくんは手をひっこめ背を向けている。 どうせ同じ態度をとられるだろうなと思ったが、僕も同じように手を突き出してみた。 「やっくん握手してよ」 目を合わせず横を向いてはいたが、やっくんはぎゅっと僕の手を握り、手のひらの温かさを確認した後、すぐに手をひっこめた。 たった一瞬の出来事だったが、まるでスボットライトをあてられたかのような気持ちの高揚を感じた。 たけし君はふてくされているのか、こっちをじっと見つめている。 「あ゛っ!」 やっくんの奇声が少し穏やかに聞こえたのは気のせいだろうか。
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