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リオは死んでも何も変わってなかった。ついでに、俺もあの頃から何も変わってなかった。
さくっと結論を言ってしまうと、結局俺とリオの間には抗いようのない上下関係が成立しており、口喧嘩においても大変あっさりと負けたのだった。
奇跡的な再会もへったくれも無く壮大な口論を交わし、果てには地面にへたり込んでしまった俺。リオは「してやったり」と言いたげな満面の笑顔で俺を見下ろしていた。
そんなリオを前に俺は急にどうしようもない気持ちに襲われ、膝を抱いて顔を伏せた。
口喧嘩で負けたからじゃない。今更になって、俺の中で様々な気持ちが渦巻き始めていた。死んだはずのリオとの再会が意味するところを。漠然としていた"とある感情"が急速に形を成し始めていた。
「……なぁ、俺はどんな顔をすればいいと思う……?」
自分でも無様だと思う。大の高校生が、自分の腰よりちょっと高いくらいの身長の幼女にそんなことを聞いていたのだ。情けなさで俯きたくなる。
なのに、目の前の幼女と来たら、眩いばかりに笑いかけるではないか。
「感動の再会だもん、泣いてもいいのよ? ……って、ついさっき死んだ人の前で、不謹慎だけどね」
最後に、ちろっと舌を出しながら。
あぁ、こいつはアイツだ。
俺は体の芯の方で、どこか確信めいたものを感じていた。
アイツと過ごした輝かしい思い出と、そのあまりの懐かしさに全身の力が抜けていく。幸せだった日々が、走馬燈のように頭を駆け巡っていく。
そりゃ夢だよ、って誰かに耳元で囁かれてもあまり驚かないけどさ。夢でもいいよ、と言い返せるくらいに、それは奇跡の再会だった。
夢でもいいから、リオと話がしたい。そんな思いとは裏腹に、口はぱくぱくと無意味な開閉を繰り返すだけ。
夢でもいいから、リオをこの目に焼き付けたい。そんな思いとは裏腹に、あまりの眩しさに俺はアイツを直視できなかった。
夢でも、いいと思える程に。
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