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「その、黄泉の国ってのは何をするとこなんだ?」
「ただ普通に、面白可笑しくのんべんだらりと過ごしてればいいのよ。そりゃもう天国!
……難しく言っちゃえば"輪廻を待つ"ところ、かな?」
「リンネ……」
現実世界で言ったら一笑で流されるような単語が出てきた。それほどまでに馴染みもなく、イメージが湧かない。
リオが「生まれ変わりを待つ、って言えば分かりやすいかな?」と真顔で言ってくれたので、ちょっとは理解できたけど。
「ようするに、まず俺もそこに行けばいいんだな?」
「そういうこと。うーん、カズミが物わかり良くなって私も嬉しいわぁ」
未だに夢心地ではあったが、考えたって仕方ない。
「じゃあ、行くか」
よいしょと立ち上がった俺。途端にリオの顔が俺の視界からフェードアウトした。身長差である。10年の歳月は俺に成長をもたらしたが、死人であるリオには何ももたらしてくれなかったようだ。そして俺は成長して、少しポジティブになったと自負している。
まず、何事も行動してナンボだ。
積もる話もとい、積もりまくって収拾付かない話もあるが、五日もの旅なら少しは解消できるだろうし。
黄泉の国とやらに行けば、そりゃもう天国のようなウッハウハが待っていると言っていた。
ならとりあえず歩き出せばいいじゃない?
そんな俺を、リオが意外そうに目を丸くして見ていた。
「どした?」
「強くなったねぇ、もっと落ち込むかと思ったのに。一体幾つ慰めの言葉考えたと思ってるのよ。言ってあげよっか?」
何を年増臭いことを。ちなみに全く結構だ。
リオの話で確信した。俺は死んでるんだし、何を足掻いてもそれだけは絶対に覆らないことくらい知ってる。
自分の死なんて到底信じられないと思っていたが、いざ現実と向き合ってしまえばなんてことはない。……自覚がないだけで、後で大波となって襲いかかってくることも可能性としてはありえたが。それでも、今俺に何かができるわけでもない。
さっきも言った通り俺はポジティブシンキングの持ち主。もっとも、大体の場合はそのベクトルがネガティブに向いているんだが。
『先輩、根暗にポジティブッスね!』ってのはとある後輩の弁である。
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