36人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
「さ、行くか」
立ち上がった。道は左右に分かれている。そういえば、ここは中腹とか言ってたな。片方を山頂として黄泉の国なら、逆に進んだら麓じゃないか。
目的地はどっちだ、と目線を斜め下に下げてリオを見る。
見下ろす形になってリオがむっとするも、小さく溜息を吐いて一歩踏み出した。
かと思うと、立ち止まって振り返った。
振り返ったリオの表情はどこか硬さを帯びていて、幼げなのに凄く達観している大人びたものを感じた。同時に、言葉を挟むことを許さない独特の硬い雰囲気も。
その唇がゆっくりと開かれるのを、俺は黙って見ていた。
「──私と一緒に、また楽しく暮らせるところに行こう」
まるで地獄の底に落とされたような悲哀を浮かべた顔で。確かにここは地獄と言えないこともないが、そんな笑えないジョークは置いといて。
希望に満ちた楽しそうな言の葉とは裏腹に、その表情は深刻の一言に染められていた。
俺には悟られないようにどこかでリオは言葉を濁したんだ。そう察するのは簡単だった。本人はきっと、俺にはバレてないと思っている。
引っかかるものを覚えたものの、リオはウソが大っ嫌いだし、何よりウソを吐く理由も見あたらないしな。俺は無言で首肯した。
それを見て硬い表情を崩したリオは、向かって右へと歩き出す。
遅れないように、俺も続いた。
最初のコメントを投稿しよう!