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一歩目を踏み出してしまえば、えらく現実的な非現実の世界が広がっている。
両脇に構えた賑やかな出店はいつまで歩いても途切れることはないし、道行く人々が代わる代わるリオに話しかけてくるもんだから歩みの遅いこと遅いこと。
『おーリオちゃん、さっきは凄かったねぇ!』
『あら、リオちゃんが男連れてるわ。ダンナかしら?』
『リオちゃんリオちゃん、一個まけてあげるからちょっと食べてかないかい?』
……ってな具合にな。生前と変わらぬご愛顧の程だ。
一人一人に笑顔で返すリオも変わってない。時に胸を張ったり、時に恥ずかしがったり、時に喜んだり笑ったり。ころころと変わる表情は見ていて飽きない。
時には、全身ヨロイを着こなしてガッチャンガッチャン言わせてる厳ついニイチャンとか、ターバンっぽいの巻いてるオエネサンとか、帯刀してたり、杖持ってたり、スナイパーライフル構えたりした奴らが、お前ら一体どこから来たんだよ、って聞きたくなるような格好でリオに親しく話しかけている。
聞いた話によると、ここ黄泉路街道は死者が最初にすっ飛ばされるところで、何時何処で死んでもここに飛ばされるらしい。
つまり、国籍も何も関係無しに、「生きとし生ける者」ならぬ「死にとし死ねる者」が一同に介する。そんな場所らしいので、別段不思議なわけでもないようだ。
話を戻そう。リオが人気な件である。
ここで極めつけとして言うならば、偶に俺のことを恨みがましい目つきで睨んでくる男共がいるわけだが、それは僻みか妬みか。リオとそんなに歩きたいかこのロリコン共め。ちょっとだけ優越感だぞ。
国籍や経歴や性癖がアレな連中も含めて、リオは相変わらず人気者らしい。
俺はぼそっと呟く。
「猫っ被り」
「何よ人聞きの悪い」
真剣に頬を膨らませて反論してくるのは俺に対してだけだ。こいつは母親にも良い顔するくせに、俺の前じゃたまにとんでもなく我が儘になったりする。
……こんな具合に。
「カズミ、ちょっと肩車して?」
「……はぁ」
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