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俺の肩の上で気前よく陽気に鼻歌を歌うリオ。
街行く人々に笑顔で手を振ってみたり、遠くに見えるものを俺に教えたりと、とにかく忙しなく肩の上で遊んでいた。
出店のおばちゃんに気前よくミカンっぽい何かを放られて、それをキャッチする。
楽しそうに皮をむきながらリオは、
「カズミ、背ー高くなったね」
「バスケ、まだやってたからな。高校じゃセンターだった」
ちなみに184センチある。うちのバスケ部じゃ一番高い。……いや、高かった、のほうが正しいか。過去形だと寂しいもんだな。
「そうそう、オマエの弟。今じゃ一年にしてバスケ部のエースだぞ」
「へぇ、すごーい! ……って、あー。私が死んじゃって、あの子泣かなかった?」
さぁ、どうだったか。その時は俺もかなりダウナーだったからな。
リオが死んだ時、俺は自分を含めた全人類の行動にてんで興味を持てなかった。
たぶん弟のやつも、いや、リオと深く関わっていた人物全員が俺と同じ気分だったと思う。あくまで推測だけどな。
そのことは、絶対にコイツには言わない。言ってやるもんか。
「さー、覚えてないな」
だから、言葉を濁した。
むっとしたリオだったが、コイツはガキの割に聡い。おまけに勘も良いし冷静だ。おそらく、心のどこかでは真相に辿り着いてるんだろう。
それでも、わざわざ言うこともないよな。
「カズミ、ウソ吐くの上手くなった」
「否定はできないな。大人は嘘を吐く生き物だ」
「じゃあ私は、一生大人にならない」
「……どこからツッコめばいいのか分からんからスルーするぞ」
そんなとりとめのないブラックジョークを交わしながら、俺たちはのんびり歩いていた。
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