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「……リオ、なんだこれ」
辛抱溜まらずこの世界の先住民であるリオに助けを求める。
しかし反応がない。まさか人の肩に乗っかって居眠りこいてるんじゃないか。そう思い、
「おーい?」
声をかけると、俺の髪に顔を埋めていたリオの体がビクッと反応した。
「本当に寝てたな」
「…………寝てらいわよ」
「うそこけ。まぁいいや、なぁ、コレなんだ」
言いながら、俺は手に持ったそいつをヒョイと掲げた。
意外とおとなしいものだ。もっとこう、メラ○ーマ、とか飛んでくるのかと思ったけどさすがにないか。
「あ、それ噛み付くわよ」
がぶり。ぎゃー。
☆ ☆ ☆
結局、あのスライムのような変な生物はリオによって追っ払われた。と言っても、手を「しっしっ」と払っただけだが。あれはハエを追っ払うのと同じ動作だった。その程度か、スライム。
俺は真っ赤に腫れ上がった右手を見つめ、言いしれぬ屈辱に見舞われていた。
「アレ……なんだよぉぉ」
「見て分からなかった? スライムよ、スライム」
「いや、まずはこの10年で俺とおまえの間に隔たってしまった哀しい差異を常識という観点から懇切丁寧に説明してほしいんだが」
ちなみに、下手な説明を貰うと俺の常識があっさりと覆る。何せ、百聞は一見に如かず。動き、噛み付いて、逃げたアレを俺はしっかりと見ている。
思えば、先に能面ババアもいたし。もしかすると黄泉の世界ってやつはモンスターが普通に現れてしまうようなところなのだろうか。
「うん、そーよ」
「生まれて十七年積み重ねてきた常識が崩壊を始めたようだ」
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