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俺は無意識のうちに右手でアレを指さしていた。
それはまるで物珍しいものを見つけた子供のようだったが、俺の心のレートは恐怖心ばかりが占めていた。
いや、だって、アレはさ。見たことなんてもちろん初めてで、神話やゲームの世界で畏怖と共に語り継がれる存在ということだけをかろうじて知ってる程度なんだ。
「あ、ドラゴンじゃん」
とりあえずこんな軽々しく口にして言い名前じゃないと思った。
おかげでこっちに気付いたらしい。こっちを向いた。命の危険を感じないでもない。
そんな俺の気も知らず、リオはにこっと笑った。
「見た方が早いと思うし、ちょっといってくるね」
「何をおまえ、死ぬって」
「や、ドラゴンくらいじゃ何回やっても負けないよ」
「あほ言え」
ドラゴンが弱いのか、はたまたおまえが超強いのかは知らないが、幼女に守られるほどの屈辱もない。いやそもそも、幼女に戦わせて高校生がぼけっと見ているなんて俺のなけなしの正義感が許さない。
かといって、どうする俺。一緒にいって仲良く食われるか。いや、コイツ一人に行かせるよりはよっぽど良い。
「うし、俺も! ──やっぱどうしようかな」
「どうするのよぉ」
「……ええい、ままよ!」
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