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ドラゴンが飛び去った空を眺めながら、俺はなんとも形容しがたい気分になっていた。
いくらなんでも、いきなり事が起こりすぎだろう。今更になって、俺の思考はショートしていた。
俺が死んで、わけの分からない世界に飛ばされて、暴走した男に襲われそうになって、昔死んだリオに助けられて、こっちのことを聞いて、旅に出ることになって、スライムと出会って、ドラゴンと遭遇して。
およそ一生分でも事足らないくらいのサプライズを僅か数時間の間に叩き付けられた。
むしろ、よく今まで持ちこたえたと褒めるべきかもしれない。
肩の上のリオをつまみ上げて地面に下ろすと、俺は思わずどっかり座り込んでしまった。スポーツでオーバーヒートしたときのように足に力が入らない。
「カズミ?」
リオが覗き込んでくる。丁度さっきもこんな図があったな、とか思いながらも苦笑いしか浮かばない。
仰向けに倒れ込みそうになる上体を、地面に手を付いてかろうじて支えると、視界に空が映った。おかしいな、これくらいのことじゃ倒れるようなヤワな体ではなかったはずだが。
リオがそんな俺の隣にちょこんと座った。
「疲れちゃった?」
「……仕方ないだろ、ってことにしといてくれ」
「うん、そうだね。今日はここで休もうか」
気付けば、辺りが薄暗くなっていた。太陽も月も雲も見あたらないが昼夜の概念は存在するようだ。
どんな理屈でそうなっているのかと疑問に思うこともなく、俺はついに空を仰いで寝ころんだ。
怠惰感に体を預けるも、まだ眠気まで襲ってきているわけではなかった。
無機質な空を見つめる。
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