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「おまえ、魔法使えるんだな」
ぼそりと呟く。確認しておきたいことがあった。
リオはすぐさま首肯する。
「ドラゴンより強いんだな」
これもまた首肯。
嘘など吐くことのない少女の答えに、俺は少し満足した。
「安心したよ」
「何に?」
ふう、と息を吐く。丈の低い草がカーペットのように敷き詰められた景色は、俺が住んでいた世界の平野となんら変わりはない。
自分の死というものは、そこまで悲観することではないのかもしれない。
それは明確な答えも信頼に足る根拠もない、曖昧すぎる考えだった。
もしかしたら、リオが昔と同じようにしてくれていることが心の支えになっていて、死に対しても楽観的になれているのかもしれないが。
それでも確かなことは、10年ぶりに再開を果たしたリオが、昔と何も変わっていないことだ。
どんな人にも愛される、喜怒哀楽の激しい忙しない表情とは裏腹に、俺にだけ理不尽なまでに我が儘なことも。
あんなバケモノ共を簡単に倒せるほどの力を持っていたのに、相手に少しの傷を与えることもなく逃がしたことも。
攻撃されながらもそれを防ぐだけで、たったの一度もやり返さなかったことも。
昔のままだ。
俺の記憶と寸分違わない、アイツのありのままの姿じゃないか。
俺が急に黙ったことを訝しむ隣に座ったリオの顔を見て、俺はそんなことを思っていたのだった。
やがて、訪れた眠気にも抗うことなく意識を手放す。
再び目覚めた時に、またリオが隣にいると根拠もなく信じて。
「Geehrt mein Freundin──
──親愛なるカズミへ。
ええと、うぅーん……思いつかないからいっか。
Alles Gute!」
第一話
【Orverture,AfterlifeStory】
──完
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