1話

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  ☆ ☆ ☆  死んだ人間はどうなるかなんて、誰でも少しは考えたことがあると思う。でも考えたところでそんなことは誰にも分からないんだよな。  しかし俺は今、一つの答えに辿り着いた。  人は死んだら、ワケの分からない世界にすっ飛ばされる。俺が今どういう状況に置かれているかは別として、今いるこの場所をとりあえず死後の世界とでも命名しておこう。 『らっしゃらっしゃい! 幽霊初心者ガイドはウチの店が一番! さぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!』 『黄泉路街道中腹名物、黄泉饅頭はいかが~?』 『オウ、そこのニイチャン、死んじまったんだし全部忘れて楽しく一杯やろうや!』  ここまで活気に満ちあふれた場所だとは思わなかったけどな。当たり前だ。幽霊だの黄泉だの死んだだの、不吉極まりない言葉がやたら明朗な声質で行き交っていた。  死後の世界といったら、もっとジメジメなイメージあるだろ普通。まるで、大河ドラマでよくある江戸の街じゃねーか。  とりあえず辺りを見渡してみる。砂利道の両脇に、所狭しと出店が商品を並べている。まるで祭りだ。  そこらに出来た人だかりからは、まるで死後の世界とは思えないくらい軽妙な笑い声が聞こえてくる。 「俺……本当に死んだのか?」  確か、ぼーっと歩いていたら階段で足を踏み外して。思い返せば果てしなく馬鹿らしい死に方だ。できれば一生思い出したくない。……って、俺死んでるんだっけ。  いや、本当に死んでいるのか? とにかくそんな疑問を抱いて然るべきな、めちゃくちゃに拍子抜けな光景が広がっているのである。  右を見れば、捻り鉢巻を締めたガタイの良い兄ちゃんが声を張り上げて客寄せしてたり、左を見れば、妙齢のオネエサンが艶めかしく誘惑していたり。  行き交う声、声、声。声が折り重なって他の音を掻き消し、俺は都会のど真ん中に取り残されたような錯覚を覚えた。  しかし見渡してみればその町並みは古風で、いつかテレビで見たような時代劇の世界に入り込んでしまったようにも思えた。  つまり、俺が言いたいことは、 「どこだよ……ここ……」  少なくとも、俺が生まれ育ったところとは違う。それは分かったが、それしか分からなかった。  
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