1話

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    ☆ ☆ ☆  アイツは、馬鹿みたいに真っ直ぐで、  俺がトイレに行くっていえば着いてくるくらいお節介で、  笑ってる時は底抜けに明るくて、  ウソが何よりも誰よりも大っ嫌いなやつで、  ことあるごとに全部全部俺に報告してくる。  勉強も運動も得意で、特に勉強では右に出るやつはいなかったけど、  実は俺にもなかなか見せないくらい隠れた努力家だった。  ガキなのにいっつも周りに気を回せて器量が良いのに、  俺に対してだけメチャクチャ我が儘で、  機嫌を悪くするとなかなか直してくれない。  でも、いっつも俺の隣にいる。  死んだアイツはそんなやつだった。  死んだはずの、アイツは。  ギィン、という耳障りな金属音。次いで、何かが吹っ飛ばされて地面に叩き付けられた砂利の音。  我が身を襲った二度目の死の気配に、情けないことに今度こそ本気で俺死ぬとか思ったんだが。  俺は自分の死以上の衝撃を覚える。  もし今、俺の腹からナイフが生えていたとしても、きっと、今俺を襲った衝撃には遠く及ばないだろう。  立ちつくす俺と倒れる男の間に割って入った一つの影。小さな影は幼子のシルエット。  二転三転する状況に思考が完全に置いてけぼりにされるも、だからこそ、それが誰かをすんなりと理解することができた。  "アイツ"は、どこからか吹き抜ける風にさっぱりしたショートカットをなびかせ、いつかと同じようにグッとVサインを俺に向ける。 「やっほー、カズミ! 生前ぶり!」  死んだはずのアイツが、俺の前で仁王立ちしていた。  
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