序章

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 気がつくと、「彼女」は布団の側にいた。  姿はないけれど声だけは聞こえる「彼女」はいた。  名前はミカ  初めて会った時、僕がつけてあげた。  ミカは、僕が風邪を引いたりお腹が痛かったりして布団で寝ていると現れる不思議な子だった。  ミカは僕の側でいつも笑ってくれていた。いつも心配してくれた。  僕はミカが大好きだった。優しいミカが大好きだった。  けどあの日、僕の家族が引越しをしたあの日からミカはいなくなってしまった。  僕はとても悲しかった。悲しくて一日中泣いた。  風邪を引いたりするのが憂鬱でしかたがなかった。  その日から、僕は一度も風邪を引いていない。  ミカに会えないとわかっているから。  声だけの「彼女」に……
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