漆黒の死神

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「近頃こういうの、多いな」 巷では、国家の陰謀で殺されたのではないか? 最近では、その話が持ち切りで連日、その特番が組まれているくらいだった。 というのも、シグルドが住む国『ストゥル』は『クラフトリアス』と国家間でにらみ合いをきたしているからだ。 その関係で、もしや戦争になるのではないかと、不安の声も大きい。 「俺には関係ないし」 確かに人を殺すのは許せないし、戦争になったら恐いという気持ちはある。 が、人間というのは実際なってみないと、実感が湧かない。 少なくともシグルドはその類の人間であった。 「やべ、仕事の時間だ!」 テレビを見すぎたせいか、仕事の時間が迫っていることに気づき、慌てて食器をキッチンに放り込み、駆け足で支度をして向かうのだった。 この時、シグルドはまだ知らない。 関係ないと、関わる訳がないと、頭に思い込んでいた。 だが時として、人は好むと好まざるとその事態へと巻き込まれていくことになる。 運命、そう逃れられぬ運命が、シグルドに迫っていた。
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