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博士「……」
「もう…遅いかもだけどな…」
ボソッと博士が言った言葉に洋一が食いつく。
洋一「え!?」
「なに!? お、遅いって…なに!?」
「なに!?もう居るって事!!ねェ!」
「何処!博さん何処にいるの!!」
洋一が焦りながら辺りを確認していると、その姿を見た全員が一斉に笑い出す。
男子学生「くく…」
「うははははは!」
周りは腹を抱えて笑っていた。
男子学生「流石ぁ博さん!うまいなぁ~」
洋一「……へ?」
洋一は唖然としながら周りを見る。
男子学生「トドメに"つぶやき"で終わらせられるんだもんなぁ~」
周りが笑うさ中、博士だけは笑っていない事を誰ひとり気づいていない。
洋一「……」
「またやられた…」
洋一は力が抜けた感じで天井を見上げる。
男子学生「元気だせよ~恒例行事!恒例行事!」
横にいた学生が洋一の肩を叩く。
バンッ
洋一「……」
洋一の肩を叩く学生の言う通り、サークルの飲み会や合宿等では洋一を怖がらせる事が恒例情事化していた。
そして洋一は毎回、面白いほど簡単に怖がり、その度に放心状態になっていた。
洋一「……」
洋一はふらふら立ち上がり、学生をかき分け歩き出した。
男子学生「あははは、どうした?」
周りの学生が笑いながら声をかける。
洋一「……」
「トイレ…っス…」
洋一は肩を落としたままトイレへに向かった。
周りは洋一姿を見て笑いながら声をかけるだけで、慰める者など誰もいなかった。
洋一はゆっくりとした足取りでトイレに入り、用をたしながら壁に向かってつぶやく。
洋一「ったく!毎回毎回!」
「嫌だって言ってんだからやめろってんだよ!」
「大体…幽霊が怖くて何が悪いってんだよ!」
「ふざけやがって…」
洋一は毎回騙されているにも関わらず、来ている自分にも腹を立てていた。
洋一「……」
「よし!決めた!」
「次は絶対来ない!」
洋一はこのように騙されてはトイレで"絶対来ない!"と決めるが、毎回後半の酔いで決意を忘れるのも恒例になっていた。
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