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「先程の入寮式で自己紹介はしたね?川平・ジェイ・政夫と、まぁ適当な名前言っちゃったけど、本当の私の名前は違うよ」
金色の瞳がゆっくり上げられ、恭弥を射すくめた。
扉に背を向けたまま、思わず恭弥の体が強張る。
二十人がけのテーブルの端と端で向かい合わせの位置で、距離があるはずなのに、理事長の低い穏やかな声は静かに空気を震わせて耳に入ってくる。
「‥私の本当の名前は、プローメーテウス。ここにいるハデスの従兄弟」
「プロ‥‥?」
思わず首を傾げる恭弥。
どこかでその名前を聞いたことがある。
すぐには思い出せないけど‥そういえば、『ハデス』という名前も‥。
金色の瞳の中に手がかりでもあるかのように、恭弥は理事長を食い入るように見つめる。
「‥ギリシア神話だよ」
理事長の薄い唇が綻んだ。
(ギリシア神話‥そうだ。確か、小さい頃色んな話を繰り返し父さんや母さんに聞かされた。‥けど、全く同じ名前なんて‥)
何か言葉を紡ごうと口を開きかけた恭弥を、軽く右手を挙げて理事長が制した。
…全てを。
話し終えるまで、何も考えない方が事態を理解しやすい。
「私はギリシア神界の星見にして予言者」
星見?予言者?
ハデスと年が変わらなく見える、理事長の話す単語の意味が理解できない。
「ギリシアの神々は実在した。何千年も昔の話だが。‥‥ねえ恭弥君。この世の中には何千何万もの沢山の神様がいるのに、どうして唯一のカミサマが現れないかわかるかい?」
突然の質問に混乱状態マックスの恭弥は、口を開けて深呼吸することくらいしかできない。
それもそうだ。
スーパーの肉屋の店員に、『牛肉が足りなくなった。今からスペイン行って、闘牛してきてくれ』とチーフに言われるようなものだろう。
‥だいぶ違うかも知れない)
「……この世のカミサマが全部、各々に別れて自分たちを信仰する信者と土地を保護して、同盟を結んだり小競り合いをしたりしてるからだよ。まるで国家みたいにね?…そして、ギリシア神界を統べる第645代統主が君、恭弥君だ」
「ええーっ!!!」
ようやく口から飛び出したのは素っ頓狂な声。
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