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「私は予言者で、オリュムポスの神々に様々な予言を与えてきた。ゼウスにも滅びの時がいずれくることを告げた時、彼は運命を拒んだ。永遠の命を求め、その方法を探し…たどり着いたのが…恭弥君、君だ」
「俺?」
(ハデス…ハデス…冥府の神ハデスだ!思い出した。母さんが好きな神話で、何回も子供の頃繰り返し聞かされた…確か、ゼウスのお兄さんだった…怖い神様かと思ったけど…)
唐突に子供時代に聞いた神話と思考回路がつながりかけてた恭弥だが、プローメーテウスにより意識が戻される。
「君は剣の鞘、癒しと再生の象徴。君の利用方法まではわからないが…」
一旦言葉を切って、プローメーテウスは意味深に微笑する。
「私はその時死んでいたし、方法はゼウス一人しか知らなかったしね…とにかく、君という存在をゼウスが得るために沢山の血が流れた」
不意に牽かれるように恭弥はハデスに目をやった。
相変わらずそっぽを向いたまま紅茶碗に口を付けているが、横顔が寂しくて、どきり…と胸の奥が痛む。
寂しい…なんて、ハデスは絶対に口にしないだろうけど、その濡れたような黒髪も黒耀石の瞳も拭いきれない寂しさが絶えず滲んで見えた。
ハデスの美しさは違う。
プローメーテウスもアフロディーテもそれぞれ神々しい美しさだが、ハデスのはそれすら通り越して透徹した美しさだった。
前も感じた〔コノ世ノモノデハナイ〕感じ。
ハデスもホントに生まれ変わった生身の人間なのだろうか…
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