桜の楽しみは酒の味わかってからだが桜見てねぇ

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まぁ、鷹がトンビを産むことだって稀にあるはずだ) 『パパを一人に何かできないわッ!恭ちゃんは寮に入ったらご飯もお風呂もあるけど、るーさんは(恭弥の父親の名前。結婚して17年経つが、二人の愛は新婚生活から変わってない)は、一人じゃ何にもできない寂しがり屋さんなのよッ』 と、こちらの意向などお構いなしに入寮手続きを推し進め、荷物を送り込んでしまった。 あとは、本人が入学式に入寮するだけ‥となっている。 (学校だって、ギリシアと関係のある財団だかなんかで、ここいらじゃ文武両道に秀でた、ちゃんとした学校てことで、受験させられたし‥確かに、俺、何が何でも行きたい学校とかやりたいこととかないけど、なんだか流されてばかりだなぁ‥) 恭弥の思惑をよそに男が、ふと、真摯な瞳を向けた。 「……お前に逢えるのを何千年も待ってた」 「なに言って‥」 目の前にいる人は、二十五、六にしか見えないのに。 何千年って意味が分からない。 だけど… (悲しい瞳だなぁ) 恭弥はぼんやり思った。 胡散臭い男だけど、嘘の臭いはしない。 なんでこんなに嬉しそうなのに、ひどく哀しんで見えるんだろう。 「俺‥」 「ちょっとハデスっ!ミイラ取りがミイラになってんじゃないわよっ」 口を開きかけた恭弥の前に突如現れたのは、濃い蜂蜜色の髪を高々と結い上げた翡翠色の瞳の美女。 外人なのに何故か藤色の着物に身を包んでいるが、妙に似合っていて、銀座の高級クラブのママだって、こうまでは‥という壮絶フェロモンが、だだ漏れしている。 真っ赤な唇から桃色の吐息がこぼれるようだ。 「これだから、アンタを迎えに出すのは反対だったのよ!どうせ恭弥君を迎えに行くのほっぽらかしてパチンコかなんか行く気だったでしょ。たまには、ちゃんと働きなさいよねっ」 「うっせーなー。ギャンキャンわめくんじゃねーよ、二日酔いの頭に響くじゃねーか。俺はなぁ、ちゃぁんとコイツ迎えに行って、コイツの危機まで救って、ほんで運命の出逢いっつー奴を今まさにやってた瞬間だったんだよ」
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