素面でテンション高い学生は考えたらエラい

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「ようこそ神威恭弥君。逢えて嬉しいよ」 皇学園は、すばらしくバカでかい敷地だった。 幼等部から大学院まで、一貫教育が行える学園だが、高校からの中途編入も珍しくはない。 文武両道の名門校だが、高レベルな偏差値だけを求めたり、運動部をウリにするところはないのだが、神域町が誇る名門校だ。 自宅生以外に用意された寮があり、校舎を取り囲むように、徒歩15分以内の範囲で、西南北に配置されている。 ‥だが、東寮だけは他の三棟がコンクリ造り四階建ての大人数収容型に比べて、思い切り旧式だった。 ‥まず木造。 そりゃ冷暖房は完備しているけど、『元ホワイトハウス』みたいな色々はげまくってくすんだクリーム色になった壁や、歩くとミシミシ言う三階までの階段とか。 なにより… 「あの‥東寮って俺だけなんですか‥?」 恭弥が恐る恐る口を開いた。 「そうだよ?君が東寮の寮生兼寮長だ。でも心配ない。ここにいるハデスが、一緒に生活するからね。あぁ あまり彼には近づかないように。完全にダメな大人の見本だからね。一人暮らしが寂しくないようの番犬か何か程度に考えておけばいいから」 と、さらりと口にしながら、目の前の男が机の上で組んだ両手に顎を乗せて微笑んだ。 その隣に立つハデスがぶすったれている。 ここは食堂で。 総勢百名程度の入寮式が講堂で行われ、各寮ごとにいざ振り分けられてみたら東寮は恭弥独りだった。 各自荷物が先に届いている寮へ行くよう促され、釈然としないながらも東寮に赴き…そして今に至る。 ドアを開けると、そこにはハデスと、さっき講堂の壇上で挨拶をしていた理事長の姿があった。 ハデスと同じ黒いスーツに黒いネクタイ。 オレンジがかった髪に金色の瞳。 ちょっと伏せ気味の大きな瞳が知性を感じさせる。
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