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「……そういや、一緒に帰る約束してたんだっけ」
自分で確認するように呟き、その紙切れを捨てる事なく折りたたみ、制服のポッケにしまいこんだ。
少年はぐ―っと背伸びをし、隣にあったカバンを持って教室を出て、学園の長い廊下を歩く。
全寮制で学園の傍に寮があるが、いかんせんこの学園は異様に広い為寮に帰るのもなかなかの時間を駆けた。
「あ――……嫌な夢見た」
少年はゆっくりと呟き、先ほどの夢を思い出す。
生まれたばかりで覚えていないはずの恐怖の記憶。生後1年ながらも幼い脳は恐怖をしっかりと覚えていたようで、これまでも度々見ていたが最近は見なくなっていたはずだった。
(いつもと違う事が起こる時は大抵他にも起こるんだよな)
歩きながら自分の今の状態を確認する。頭は相変わらずくせ毛で薄いクリーム色の髪の毛、自分の左頬の傷も変わらない。左頬が少し痛いような気がするが夢を見た後は必ず痛くなるので、特に不思議ではない。
今は鏡が無いから確かめられないがきっと眼は相変わらず青いだろう。
(思い過ごしかな……)
そう思った矢先、誰もいなかったはずの長い廊下に一人の少女が現れた。
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