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祝福ムードへとなり掛けた場の雰囲気が、一瞬にして微妙なものに変わってしまう。何と、八平と伊與の二人は、互いに再婚同士だったのだ。
しかも翌々話を聞けば、伊與は今回が三度目の婚儀だと言う。
その事もあり、当人の希望で式などは一切執り行わず、坂本家へと輿入れするのだそうだ。
父の重大発表のおかげもあり、龍馬が散々、家族に心配を掛けた事など完全に吹き飛んでしまっていた。
「アシは、こじゃんと驚いちゅうがよ!」
龍馬は、父の部屋を出るなり乙女につぶやいてみせる。
「ウチやて、おんなじぞね」
乙女にとっても、それは同様の驚きだった。まさか父が、新しく母を迎えようなどとは思いも依らなかった。
それから数日が過ぎた──
龍馬は川辺に座り、きらきらとたゆたう鏡川の水面をぼんやりと眺め佇んでいる。
「どがな人が、新しい母上になるろうかのぉ…」
八平が再婚すると家族に発表して以来、龍馬は新しく母となる伊與の事ばかりを考えていた。
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