土佐の身分制度

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 坂本家は大家族、しかも大変な女所帯である。  男衆は、家長の八平と長男の権平、そして末っ子の龍馬の三人、それに対し女性陣は、病弱な母の幸を筆頭に権平と龍馬の間に三人の姉妹がいた。今は高松家へと嫁いだ長女の千鶴(ちづ)と柴田家へ嫁いだ次女の栄、そして龍馬より三つ年上の三女乙女(とめ)がそれだ。  その上、権平の妻千野やその娘である春猪に加え、龍馬の乳母やべをはじめとする数人の女中を坂本家は養っている。  上の二人の姉が、すでに嫁いでいるとは言え、龍馬はそうした女所帯の中で成長して来た。  そんな、坂本家の賑々しい一日が今日も始まる。  いつものように、この日の朝も坂本家の庭先には龍馬のオネショ布団が干されていた。  その布団を見詰めながら、龍馬は考え込む。さすがにこの年での寝小便はまずいと自覚したのか、珍しく難しい表情で悩む。 「う~ん、どういてアシのここは勝手によばれ(寝小便)を垂れるがやろうのぉ…」  自分の股間に目をやり、一向に治る気配のない寝小便を龍馬なりに憂いているらしい。  しかし、そんな悩みも、朝餉が始まれば何処吹く風、龍馬は喜び勇んで自分の席に着いた。
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