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「仕方がないねや…龍馬、ちっくと来ぃや!」
半平太は、思い立ったように龍馬の手を引いて歩き出す。
「どういたが?武市さん」
「えいき、着いて来ぃや!!」
そう言って半平太が連れて来たのは、龍馬の家からも程近い、彼行き付けの饅頭屋『大里屋』であった。店の前では、その倅長次郎が小気味よく往来に向かって売り文句を発している。
「長次郎、相変わらず威勢がえいのぉ」
「あぁ、武市さんに龍馬さん、いらっしゃい!」
笑顔で歩み寄る半平太に対し、長次郎も笑顔で返す。
「あれ?龍馬さん、一体どういたがですか…」
未だにうなだれたままの龍馬、心配そうに長次郎が顔をのぞき込むが反応はない。
「いつもの事ぜよ。それより長次郎、饅頭をいくつか頼む!」
半平太の口ぶりから、龍馬がオネショの事で気落ちしているのだと長次郎にも察しが付いた。
「龍馬さん、元気を出してつかぁさいね…」
そう言い残すと、長次郎は一旦店の中へと戻り出来立ての饅頭をいくつか包んで再び現れた。
「ありがとうございます!」
「ほんだらの!長次郎」
饅頭を受け取り、半平太は龍馬を伴って再び歩き始めた。
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