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「何ちや、おまん…さっきまでしょう(非常に)しょげちょったろうが…」
饅頭一つでコロッと元気を取り戻す龍馬、何とも現金なものだと半平太も呆れるばかりだ。
「まぁ、変わり身が早いがは、おまんらしいがのぉ…」
──と、半平太は苦笑する。
「武市さん、おかげで元気が出たちや。ありがとう!」
屈託なく笑う龍馬の顔が、また何とも清々しい。こんなにも嬉しそうな笑顔をされては、半平太も怒るに怒れない。
そんな二人の後ろから、何気ない声が掛けられた。
「ありゃあ!?武市さんに龍馬じゃいかぁ…」
聞き覚えのある声に龍馬と半平太が即座に振り向く。すると、釣竿を携えた山本数馬がそこに立っているではないか。
「二人揃うて、こがな所で一体どういたがですか?」
親しげに歩み寄り、数馬は無遠慮に龍馬の隣へと座る。
「数馬こそ、釣竿らぁ持って、これから釣りかえ?」
「いやぁ、釣りは止めじゃ止め!今日は全く釣れんろう…」
半平太の問いに数馬は大きな溜め息を漏らす。朝から釣りに興じていたらしいのだが、芳しい釣果とはならなかったようだ。
「数馬、おまんもどうぜ」
「おぉ!大里屋の饅頭じゃな」
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