龍馬の将来

11/17
前へ
/220ページ
次へ
「実はお嬢さん…坊さんがいなくなって、しょう心配なさってたがですよ…」  途端、乙女の顔が上気したように真っ赤に染まる。 「おやべさん、それは言わない約束ぞね!!」  慌てる乙女だったが、もう後の祭りだ。龍馬が不思議そうに彼女の顔をのぞき込んでいた。 「どういてなが?」  曇りのない瞳で龍馬が尋ねる。すると乙女は、恥ずかしさのあまり、とっさに龍馬から顔を背けてしまう。 「お嬢さんは、坊さんがお屋敷を飛び出して、何処か遠くへ行かれたち思うたがですよ」  やべが、そっと耳打ちをする。似王様の如く厳しい姉の、意外な一面を龍馬は知った。 「お乙女姉やん…」 「な、何ぞね…!?」  含みのある笑みを浮かべ、龍馬が見ている。 「ありがとう…」 「あ、ありがとうじゃないろう!まずは謝るがが先ぞね…」  思いがけない龍馬の言葉に、乙女は思わず心にもない一言を口走った。 「龍馬、覚悟しぃや!帰ったら、さっそく剣術の稽古ぞね!!」  そして、いつものように威勢のいい言葉を続ける。それが、乙女の照れ隠しである事が、龍馬にもありありと分かった。  さて、数日が過ぎ、龍馬の“家出騒動”は仲間内の知るところとなっていた。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

292人が本棚に入れています
本棚に追加