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「言って置くけんど、アシはただ散歩に出ちょっただけやき!みんなぁが、それを勘違いしたちいかんがぜよ!」
しかし、その勘違いの切っ掛けを作ったのは、紛れもなく龍馬の「旅に出て来る」と言う一言であった。それ故、龍馬も何となしにバツが悪い。
「さて、アシははや去ぬるぜよ!ほんだらの、皆の衆…」
言いたい事を言って気が済んだのか、龍馬は最後にそう付け加え慌てて大里屋を退散した。
清平達の笑い声が聞こえるが、それを振り切るように目もくれず龍馬は走る。
屋敷まで戻ると、門前で乙女が待ち構えていた。まるで仁王様のような佇まいである。
「龍馬、只今戻りました…」
「すんぐに剣術の稽古を始めるぞね!えいな?龍馬」
龍馬と相反するように、乙女は気合い気十分だ。
さっそく庭へと回り、龍馬が準備に取り掛かると、待ちわびたように乙女が身構えている。
「さぁ、どっからでも掛かってきぃや!」
そう言われても、気迫のこもった姉の構えには打ち込める隙など見当たらない。龍馬は、只々躊躇するばかりである。
「どういた?おまんが来んがやったら、こちらから行くがぞ!」
言うや否や、乙女は鋭く激しい打ち込みを龍馬に見舞う。
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