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「えぇ!アシのせいなが!?」
「当たり前やろうが!」
そんな風に言われても、龍馬は困惑するばかりだった。
「さぁ龍馬、おまんは一体どうするぞね?」
「いや!どうするち言われても、どういたらえいかアシが聞きたいくらいぜよ」
困り顔でそう答える龍馬、まるで他人事のように無責任な物言いである。
「おまんは、まぁたそがな事を言いゆう!自分の将来くらい、自分で考えられんがか!?」
改めてそう言われ、龍馬はしばし思案する。一体、自分は今どうするべきなのか、この先どうしたいのか。
「ア、アシやち、なれるがやったら父上のような立派な侍になってみたいぜよ…」
ポツリと、自信なさげに龍馬がつぶやく。
父八平は、文武の人である。龍馬は、そんな父のようになりたいと言う。いつも流動的で飄々としていた龍馬が、生まれて初めて、自分の意思をしっかりと口にした瞬間である。
「よう言うた!龍馬」
乙女は、嬉しく思った。いつも浅はかにみえる龍馬が、少しは自分の行く末を考えていたのだ。
「ならば、これからどういたらえいか、分かっちゅうがやろ?」
「ど、どういたらえいが?」
ここまで来ると、何となく嫌な予感しかしない。
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